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道Nihongo Path

通勤 — 通勤時間という「第三の場所」

Time limit 14 min

By Nihongo PathUpdated

Strategy notes: read these before the passage

  • Long passages follow a story arc: problem → trigger → change → generalization. Mark each paragraph's role so you can find answers fast.
  • 「答えは、『何も』だった」: to interpret a one-word answer, find the question it answers (自分は同じ時間で何をしただろう).
  • The concession 「もちろん〜。しかし〜」 in the last paragraph shows the writer is aware of objections; the claim after しかし is the thesis.

Passage

日本の会社員の平均通勤(つうきん)時間は、往復(おうふく)で一時間を超えると言われる。一年に二百日働くとすれば、年に二百時間以上、つまり八日以上を、電車やバスの中で過ごしている計算になる。この時間を「無駄(むだ)」と考える人は多い。私も長い間そう思っていた。

きっかけは、転勤(てんきん)だった。それまで自転車で十分だった通勤が、電車で片道五十分になった。最初は、毎日往復で百分も取られることが苦痛(くつう)で、スマートフォンでニュースやSNSを見て時間をつぶしていた。しかし、そうして過ごした日は、会社に着いたときも家に帰ったときも、なぜか疲れていた。

ある日、電車で本を読んでいる年配(ねんぱい)の男性を見た。分厚い歴史の本だった。降りる駅が同じで、毎朝同じ席に座っていた。数週間後、その本は別の本に変わっていた。私は、この人は一年で何冊読むのだろうと考えた。そして、自分は同じ時間で何をしただろうと思った。答えは、「何も」だった。

それから、私は通勤のルールを決めた。行きは本を読む。帰りは、何も見ない。窓の外を眺(なが)め、その日にあったことをぼんやり考える。行きの読書で、一年に四十冊読めるようになった。帰りの「何もしない時間」は、意外にも、家に着いてからの気分をよくした。会社の問題を家に持ち込まなくなったからだ。

社会学者は、家でも職場でもない、その中間にある場所を「第三の場所」と呼ぶことがある。カフェや公園、図書館などだ。私は、通勤時間もそうした場所になりうると思う。だれにも話しかけられず、仕事の電話も来ない。自分だけの五十分。それは、会社が与えてくれる「休憩(きゅうけい)」より、ずっと自由な時間だ。

もちろん、満員電車で本を開くのは難しいし、通勤そのものをなくせるならそれが一番だ。しかし、避けられない時間なら、「取られている」と考えるより、「与えられている」と考えたほうが、同じ五十分がまったく違うものになる。時間は、長さではなく、使い方で決まる。通勤時間は、私にそれを教えてくれた。

Vocabulary in this passage

通勤つうきん
commuting
往復おうふく
round trip
無駄むだ
waste
転勤てんきん
job transfer
片道かたみち
one way
苦痛くつう
pain, suffering
時間をつぶすじかんをつぶす
to kill time
年配ねんぱい
elderly
分厚いぶあつい
thick (book)
眺めるながめる
to gaze at
持ち込むもちこむ
to bring in
避けるさける
to avoid

Questions

Ready

14:00

of 14:00

Question 1

Choose the best answer

転勤の後、スマートフォンで時間をつぶしていたころ、筆者はどう感じていたか。

Question 2

Choose the best answer

「答えは、『何も』だった」とはどういう意味か。

Question 3

Choose the best answer

帰りの電車で「何も見ない」ことには、どんな効果があったか。

Question 4

Choose the best answer

筆者の考えに最も合うものはどれか。

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