「好きなことを仕事に」への疑問(意見文)
By Nihongo PathUpdated
Strategy notes: read these before the passage
- Skim paragraph openings first to build a map: problem, example, counterargument, proposal, conclusion. Then answer questions in order; they follow the text.
- When a question quotes an underlined phrase, the explanation is almost always in the sentence right after it. Read one sentence on either side.
- Watch for options that overstate (完全に, すべて, 止めるべき). The author usually takes a balanced position and rejects the extreme.
Passage
「好きなことを仕事にしよう」という言葉を、最近よく目にする。就職活動の本にも、起業を勧める広告にも、この言葉があふれている。好きなことなら努力が苦にならず、才能も伸びる。そう聞けば、確かにもっともに思える。
しかし、二十年近く働いてきた私は、この言葉に少し違和感を覚える。私自身、学生時代は写真が好きで、カメラマンになる道を真剣に考えた。結局、写真とは無関係の事務の仕事に就いたのだが、今になって思うのは、あのとき写真を仕事にしなくてよかった、ということだ。
理由は単純である。仕事にした瞬間、「好き」は「やらなければならないこと」に変わる。撮りたくない被写体を、気の乗らない日に、締め切りに追われながら撮る。それが仕事というものだ。好きだった写真が、いつの間にか義務になり、やがて嫌いになってしまう。そうした例を、私は周囲で何度も見てきた。趣味のままだったからこそ、私は今も週末にカメラを持って出かけることができる。
もう一つ、この言葉には見落とされがちな前提がある。それは、「好きなこと」がすでにはっきりしている人を想定している点だ。しかし実際には、若いうちに自分の好きなことを確信できる人はそれほど多くない。私の周りにも、「好きなことが見つからない」と悩んで、就職そのものをためらう若者がいる。「好きなことを仕事に」という言葉は、彼らを励ますどころか、かえって追い詰めているのではないか。
では、何を基準に仕事を選べばよいのか。私は、「好き」より「続けられるか」のほうが大切だと思う。派手な情熱がなくても、毎日やって苦にならないこと、やっているうちに少しずつ上手くなっていくこと。そういう仕事は、続けるうちに愛着が生まれる。私の事務の仕事も、最初は特に好きだったわけではない。しかし、書類を正確に整える作業が自分に向いていると気づき、十年目あたりから、これは自分の仕事だと思えるようになった。「好き」は出発点ではなく、到達点なのかもしれない。
誤解のないように言えば、好きなことを仕事にして幸せに働いている人を、私は否定しない。それがうまくいく人は確かにいる。ただ、それが唯一の正解であるかのように語られることには、反対したい。好きなことは、仕事にしなくても、人生を豊かにしてくれる。そして仕事は、好きでなくても、続けるうちに自分のものになる。若い人には、この二つを切り離して考える自由を持っていてほしいと思う。
Vocabulary in this passage
- 起業きぎょう
- starting a business
- 苦にならないくにならない
- to not be a burden
- もっとももっとも
- reasonable, plausible
- 就くつく
- to take (a job)
- 被写体ひしゃたい
- photographic subject
- 気が乗らないきがのらない
- to not feel like doing
- 義務ぎむ
- obligation
- 前提ぜんてい
- premise, assumption
- 確信かくしん
- conviction, certainty
- 追い詰めるおいつめる
- to corner, drive into a corner
- 愛着あいちゃく
- attachment, fondness
- 到達点とうたつてん
- destination, end point
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