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道Nihongo Path

随筆 — 隠した言葉、取り戻す言葉

Time limit 10 min

By Nihongo PathUpdated

Strategy notes: read these before the passage

  • Personal essays with a time structure (最初の一年 → 三十を過ぎて → 最近) shift the writer's view at each stage. Track the change.
  • The linguist's remark in paragraph 3 supplies the abstract frame; the writer's own experience is then reread through it.
  • The last paragraph generalises: three acts (隠す, 取り戻す, 教える) are answers to one question. Expect a question on that unification.

Passage

上京して最初の一年、私は自分の言葉を隠すことに神経を使った。語尾(ごび)のわずかな上がり下がり、地元でしか通じない語彙。それらが口をついて出るたびに、相手の目にかすかな「判定」が走るのを感じた。田舎者、という判定である。私は標準語(ひょうじゅんご)を身につけることを、都会で生き延びるための技術だと考えていた。

だが、三十を過ぎて帰省(きせい)した際、奇妙なことが起きた。私は方言を話せなくなっていたのではない。話せるのに、話すことに躊躇(ちゅうちょ)を覚えたのである。幼なじみの前で口をついて出た方言は、自分の耳にどこか演技じみて響いた。かつて隠そうとした言葉が、いまや「取り戻そうとしている言葉」になっていた。

言語学者は、方言とは単なる音声や語彙の体系ではなく、話者が「自分は誰であるか」を示すための資源だと言う。私は標準語を身につけることで、都会の一員という自己を獲得(かくとく)した。しかしその過程で、もう一つの自己を、意図せず手放していたのである。方言を話せることと、方言で自分を語れることとは、別のことだった。

最近、私は娘に地元の言葉を教えている。娘にとってそれは母語(ぼご)ではなく、父の故郷の「外国語」のようなものだろう。それでもよい、と思う。言葉は血のように受け継がれるものではなく、選び直されるものだ。私自身がそうであったように。隠すことも、取り戻すことも、教えることも、すべては「自分をどう語るか」という一つの問いの、異なる答えにすぎない。

Vocabulary in this passage

上京するじょうきょうする
to move to Tokyo
語尾ごび
sentence ending, intonation
口をついて出るくちをついてでる
to slip out (of the mouth)
判定はんてい
judgement
帰省するきせいする
to return to one's hometown
躊躇ちゅうちょ
hesitation
演技じみたえんぎじみた
seeming like acting
体系たいけい
system
資源しげん
resource
獲得するかくとくする
to acquire
手放すてばなす
to let go of
受け継ぐうけつぐ
to inherit

Questions

Ready

10:00

of 10:00

Question 1

Choose the best answer

上京当初の筆者にとって、標準語を身につけることはどういう意味を持っていたか。

Question 2

Choose the best answer

「奇妙なこと」とは何か。

Question 3

Choose the best answer

「方言を話せることと、方言で自分を語れることとは、別のことだった」とはどういう意味か。

Question 4

Choose the best answer

筆者が「それでもよい」と思う理由は何か。

Question 5

Choose the best answer

筆者が最後に至った認識として最も適切なものはどれか。

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