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道Nihongo Path

美術評 — 描かないという技術

Time limit 10 min

By Nihongo PathUpdated

Strategy notes: read these before the passage

  • Criticism balances praise and reservation. Locate exactly what is praised (才能, 技術) and what is doubted (方向).
  • The ink-painting example is there to define 余白; questions on 考える場所 are answered from that definition.
  • Paradoxical statements (描かないという選択は描けない者にはできない) are typical N1 targets; paraphrase them before choosing.

Passage

ある若手画家の個展(こてん)を見た。技術は申し分ない。色彩は大胆で、構図は緻密(ちみつ)、画面のどこを取っても手抜きがない。会場を出て、しかし、私はひどく疲れていた。すべての絵が、見る者に一秒の休息(きゅうそく)も許さなかったからである。

日本の伝統的な絵画には、「余白(よはく)」という概念がある。描かれていない部分は、単に空いているのではない。描かれた部分と同じ重さで、あるいはそれ以上の重さで、画面に参加している。水墨画(すいぼくが)の一筆(ひとふで)の鳥が広大な空を感じさせるのは、鳥の描写が優れているからではなく、鳥の周囲に何も描かれていないからだ。余白とは、作者が見る者に手渡す「考える場所」である。

現代の視覚文化は、この場所を組織的に埋めてきた。画面という画面が情報で満たされ、一瞬の空白は「無駄」として排除される。若手画家の作品は、その文化の産物(さんぶつ)なのだろう。彼は「描き込むこと」を「充実」と取り違えている。だが充実とは、量ではなく、密度と空虚(くうきょ)の対比によって生まれるものだ。

私は彼の才能を疑わない。疑っているのは、才能を注ぎ込む方向である。技術を持つ者ほど、それを見せずにいることが難しい。描かないという選択は、描けない者にはできない。それは技術の放棄ではなく、技術の最終段階である。彼が次の個展で、一枚でも「何も描かれていない場所」を残せたなら、私はそこに、彼が画家として成熟(せいじゅく)した証(あかし)を見るだろう。

Vocabulary in this passage

個展こてん
solo exhibition
申し分ないもうしぶんない
impeccable
緻密ちみつ
meticulous
手抜きてぬき
cutting corners
休息きゅうそく
rest
余白よはく
blank space, margin
水墨画すいぼくが
ink painting
排除するはいじょする
to exclude
産物さんぶつ
product
取り違えるとりちがえる
to confuse (one thing for another)
空虚くうきょ
emptiness
成熟せいじゅく
maturity

Questions

Ready

10:00

of 10:00

Question 1

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筆者が会場を出て「ひどく疲れていた」のはなぜか。

Question 2

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「考える場所」とはどういうものか。

Question 3

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若手画家が「取り違えている」こととは何か。

Question 4

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「描かないという選択は、技術の最終段階である」とはどういう意味か。

Question 5

Choose the best answer

筆者の若手画家に対する評価として最も適切なものはどれか。

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