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道Nihongo Path

論説 — 「効率」という信仰

Time limit 16 min 40 s

By Nihongo PathUpdated

Strategy notes: read these before the passage

  • Long argumentative essays follow: concession → thesis → anticipated objection → partial acceptance → rebuttal → proposal. Label each paragraph before the questions.
  • Paragraph 3 is the opponent's voice (こう反論するだろう); do not attribute it to the writer.
  • Two analogies (安全装置, 速度計だけを見て走る車) restate the thesis; use them to check your answer to the main-claim question.

Passage

効率(こうりつ)を高めることに異を唱える者は、現代社会ではほとんどいない。無駄を省き、同じ成果をより少ない時間と資源で得る。これに反対するのは、怠惰(たいだ)か時代錯誤(じだいさくご)のどちらかだと見なされる。私自身、効率化がもたらした恩恵を否定するつもりはない。半日がかりだった手続きが数分で終わり、遠隔地の人と瞬時に言葉を交わせる。これらは疑いなく進歩である。

だが、私が疑問に思うのは、効率が「手段」から「目的」へと、いつの間にかその位置を変えてしまったことである。本来、効率とは何かを達成するための尺度(しゃくど)にすぎない。何を達成したいかが先にあり、そのための最善の道筋を選ぶ際に効率が参照される。ところが今日では、効率そのものが追求すべき価値となり、「何のために」という問いは後景(こうけい)に退いた。会議の時間を半分にすることが目標となり、その会議で何を決めるべきかは誰も問わない。

効率の信奉者(しんぽうしゃ)は、こう反論するだろう。「目的を問わないのではない。目的は自明であり、問う必要がないだけだ」と。企業であれば利益、行政であれば住民サービス、個人であれば幸福。それらは既知であり、残る課題はそこへの最短距離を見つけることだ、と。

この反論には一定の説得力がある。確かに、日々の業務のすべてにおいて根本的な目的を問い直していては、何も前に進まない。目的を所与(しょよ)として手段の最適化に集中することは、実務上の知恵である。私はそれを認める。

しかし、問題は「所与」とされた目的が、効率化の過程で静かに変質することにある。たとえば教育の目的が「思考力の育成」であるとしよう。しかし思考力は測定しにくい。測定できないものは効率化できない。そこで、測定可能な代理指標(だいりしひょう)——試験の点数、進学率——が導入される。やがて代理指標が目的そのものに置き換わり、教師は点数を上げる技術を磨き、生徒は考えることより正解を出すことを学ぶ。効率は上がった。だが、何の効率か。当初の目的は、効率化に適した形に切り詰められ、原形をとどめていない。

これは教育に限らない。医療では治癒(ちゆ)より在院日数が、報道では真実より閲覧数が、研究では発見より論文数が、それぞれ目的の座を奪った。いずれも、「測れるものを最適化する」という効率の論理が、「測れないが重要なもの」を組織的に排除した結果である。効率の信奉者が「目的は自明だ」と言うとき、その自明な目的は、すでに効率の都合に合わせて作り変えられたものである可能性が高い。

では、効率を捨てるべきなのか。そうではない。私が求めているのは、効率を測るたびに「何の効率か」を問い直す習慣である。それは効率化の敵ではなく、効率化が本来の目的から逸脱(いつだつ)していないかを点検する、いわば安全装置である。この装置を持たない効率化は、速度計だけを見て走る車に等しい。どこへ向かっているかを見ずに、速いことだけを誇っている。

効率は信仰ではなく道具である。道具は、何のために使うかを問われて初めて意味を持つ。その問いを面倒だと退ける社会は、やがて何のためでもない速さのなかで、自らが何を望んでいたのかを忘れるだろう。

Vocabulary in this passage

異を唱えるいをとなえる
to object
怠惰たいだ
idleness
時代錯誤じだいさくご
anachronism
恩恵おんけい
benefit, blessing
尺度しゃくど
measure, yardstick
後景に退くこうけいにしりぞく
to recede into the background
信奉者しんぽうしゃ
devotee, believer
所与しょよ
given (premise)
代理指標だいりしひょう
proxy indicator
切り詰めるきりつめる
to cut down
逸脱するいつだつする
to deviate
退けるしりぞける
to dismiss, reject

Questions

Ready

16:40

of 16:40

Question 1

Choose the best answer

筆者が認めている点として正しいものはどれか。

Question 2

Choose the best answer

効率が「手段」から「目的」へ位置を変えたとはどういうことか。

Question 3

Choose the best answer

代理指標の例が示していることは何か。

Question 4

Choose the best answer

「速度計だけを見て走る車」という比喩が表しているものは何か。

Question 5

Choose the best answer

第四段落の役割として最も適切なものはどれか。

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