Skip to content
道Nihongo Path

評論 — 「役に立ちません」と書けない申請書

Time limit 10 min

By Nihongo PathUpdated

Strategy notes: read these before the passage

  • '第一に / 第二に、より深刻なことに' ranks the two distortions. A question may ask why the second is worse.
  • The historical example (電磁気学) supports the claim that value can only be judged afterwards; connect example to claim.
  • The proposal paragraph concedes a cost (多くは何の役にも立たない) before asserting the benefit. Do not mistake the concession for the conclusion.

Passage

「その研究は何の役に立つのですか」。基礎研究(きそけんきゅう)に携わる者が、予算審査のたびに突きつけられる問いである。誠実に答えれば「わかりません」となる。役に立つかどうかがわかっている研究は、もはや基礎研究ではないからだ。だが「わかりません」と答えた申請書に予算がつくことはない。こうして研究者は、本心では信じていない「応用の見通し」を書き添えることを学ぶ。

この制度が生む歪(ゆが)みは二重である。第一に、申請書に書かれた「見通し」は、審査を通すための修辞であるため、実際の研究の方向を反映しない。審査側もそれを承知で読んでいる。双方が虚構(きょこう)と知りながら演じる儀式に、膨大な時間が費やされる。第二に、より深刻なことに、「見通し」を書きやすい研究ばかりが選ばれる。真に予測不能な研究——つまり最も大きな発見をもたらしうる研究——ほど、この篩(ふるい)から落ちる。

歴史を振り返れば、現代を支える技術の多くは、当初「役に立たない」とされた研究から生まれた。電磁気学は、発見当時、玩具(がんぐ)以上の用途を想像されていなかった。研究の価値は、事後にしか判定できないことが多い。にもかかわらず、事前の「見通し」で選別する制度は、価値の判定を、最もそれに適さない時点で行っていることになる。

では、どうすべきか。私は、予算の一定割合を「用途を問わない枠」として切り分けることを提案したい。審査基準は、応用の見通しではなく、問いの独創性(どくそうせい)と研究者の実績のみとする。その枠から生まれる成果の多くは、おそらく何の役にも立たない。しかし、残りのわずかな成果が、それ以外の全予算を上回る価値を持ちうる。それが基礎研究というものである。役に立たないことを許容(きょよう)する余裕こそが、役に立つものを生む土壌なのだ。

Vocabulary in this passage

基礎研究きそけんきゅう
basic research
携わるたずさわる
to be engaged in
突きつけるつきつける
to thrust before, confront with
見通しみとおし
outlook, prospect
歪みゆがみ
distortion
修辞しゅうじ
rhetoric
虚構きょこう
fiction
篩ふるい
sieve
玩具がんぐ
toy
選別するせんべつする
to sort, select
独創性どくそうせい
originality
許容するきょようする
to tolerate, allow

Questions

Ready

10:00

of 10:00

Question 1

Choose the best answer

「わかりません」が誠実な答えになるのはなぜか。

Question 2

Choose the best answer

「儀式」とは何を指すか。

Question 3

Choose the best answer

第二の歪みが「より深刻」なのはなぜか。

Question 4

Choose the best answer

電磁気学の例はどのような主張を支えているか。

Question 5

Choose the best answer

筆者の提案と、それを支える最後の主張として正しいものはどれか。

0 / 5 answered. Answer every question to check.